Photograph from Asia 


   ビルマ美人とピノチェト元大統領

写真・文/ 細野 幸宏 (ほその ゆきひろ)   


 

 かわいい。どうしてビルマ女性というのは、こんなにカワイイのか。彼女らが美しく見える理由のひとつは、英語にある。元英国植民地だけあってビルマ人は英語がうまいが、ことに彼女は流暢なクィーンズ・イングリッシュをしゃべった。彼女を見つけたのは入場料として35チャットが取られるカンドヂー公園だから、おそらく良い家のお嬢さんだろう。「How do you speak sucha good English?」(なぜ、そんなに英語が上手なんですか?)と訊くと、シンガポールの大学で勉強している、と言った。
 くりかえすまでもなく、ビルマでは主要な大学は軍事政権によって閉鎖中だ。大学キャンパスが学生運動の温床となることを恐れた措置だと言われている。大学閉鎖などはまだ序の口で、抑圧政策は数えきれないほど行われている。ひょっとすると、いまの軍事政権幹部はいずれ国際法廷で裁かれるかもしれない。その意味で、チリ元大統領ピノチェト氏が英国で逮捕されたというニュースは注目だ。ピノチェト政権は1973年にクーデターで政権を掌握して以来、左翼陣営を徹底的に弾圧した。その反面、チリ経済は1990年代まで未曾有の好況をつづけた。この約20年間の成長ぶりをペルーと比べるとわかりやすい。70年代前半まで、チリとペルーはほぼ同じ経済規模をもち、どちらも銅の産出を主要な輸出資源としていた。ところがペルーは右へ左へと政権が変わり、朝令暮改的な政策決定を連発した。その結果、80年代後半には約1620%というハイパーインフレーションが生じて、フジモリ大統領の登場となったわけだ。
 ビルマの軍事政権を支持する理由として、しばしばこのピノチェト政権の成功例が引き合いに出される。つまり、政情が不安定な途上国においては、強権を振るう経済政権こそが求められる。国民を豊かにし、中産階級を創出してこそ民主主義へソフトランディングできるのだ、と。確かに財閥を解体し、農地改革を断行した日本の戦後を見るにつけ、その公式は正しいと思える。現軍事政権を支持し、ODAを含めた経済援助を惜しまない日本政府の立場もこの公式に準じている。
 ビルマ軍事政権は、将来的に民主主義への移行を公約している。ピノチェト元大統領はチリを十分に経済成長させた後、公約どおり民主選挙を実施して政権を委譲した。そして、ピノチェト元大統領に国際的な制裁はくだるのだろうか。結果によっては、ビルマ軍事政権幹部をますます権力の座から離れがたくするかもしれない。


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