Photograph from Asia 28



 

   リキシャの絵が描くもの

   写真・文/ 小池 奈美 (こいけ なみ)   

 明治時代に日本からアジア各国に輸出され、それぞれの国でそれぞれの形に改良されながら普及していったリキシャ。日本での人力車というひとつの形から、数十年を経た現在ではそのスタイル、デザイン、用途などがその土地によって異なるのは興味深い。
 バングラデシュでは、交通手段はサイクルリキシャが圧倒的に多く、人々の生活を支える重要なものといえる。また、後部に描かれた絵は、初めの頃は映画スターがほとんどであったが、1971年の独立の頃から政治的なメッセージ性の高いもの、また、リキシャの所有者の生活に密着したものが多く描かれるようになったといわれている。そして現在ではその両方を見ることができる。パキスタンへ入ると大都市ではサイクルリキシャはほとんど見かけなくなる。日本の中古車のワゴン(ミニバス)やタクシー、中国製の大型バス、それらに並んでオートリキシャが多い。そして何より驚かされるのは装飾の派手さ加減である。イスラム教の国として偶像崇拝が禁じられているため、絵はあまり描かれていないが、オートリキシャの車内はアラビア文字や金銀キラキラの飾り、鏡や家族の写真などで埋めつくされている。フロントガラスにいたっては運転手の目の前の50センチ四方くらいしか見える所が無く、まわりは全てべたべたと飾りがくっついていたりする。この国の人々の底抜けな陽気さがよくわかる。じつは、日本の人力車もかつては座席の背面に花鳥画や名所画が描かれていたそうだ。後に交通法規上装飾は禁じられてしまったが、アジア向けに輸出された人力車は、装飾の華やかなものが好まれたという。
 このように、運転手の意志で飾り立てられるリキシャたちをみると、それが彼らの自己主張であり、また彼らの生活や希望、さらには社会状況までをも写し出していると思う。


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