Photograph from Asia 20


   LOVELY GIRL in CAMBODIA

   写真・文/ 嘉納 まふゆ (かのう まふゆ)   


 1993 年、カンボジア。UNTACによる総選挙が行われた年の9月に、私はこの少女と出逢った。まだ前線があるといわれていたシエムレアップを訪れたとき、彼女はアンコールワットの遺跡に続く石畳の上に、ちょこんと座らされていた。一緒に行った通訳は、「いつもの物乞いよ」というようにさっさと通り過ぎようとしたが、私は彼女を立ち止まってよく見てみたかった。足を止めたのは彼女の不具な身体に興味をひかれたからだったが、私が写真を撮りたいと思ったのは、彼女がそんな身体に似合わぬ、とてもかわいい雰囲気をもっていたからだった。小さくてあたたかい、人に愛されるオーラをも彼女は持っていた。 人の幸・不幸は、見た目やお金や肩書きなどで決るものではないが、まさに彼女は身を持ってそれを証明しているように私には思えた。彼女はその不自由な身体と邪気の無いかわいい顔で、身体は普通の人と違っても、私を愛して、守ってくれる人がいる限り、決して私は不幸なんかじゃないの、と言っているように感じた。彼女が生まれつきこうだったのか、それとも子だくさんの家計を支えるために、幼い頃に手足を切断されてしまったのか、私は尋ねなかったが、少なくともそのときの彼女が、耐え難い境遇に置かれていないことだけはわかったので、私は2回シャッターを切り、そのお礼に1ドル紙幣を1枚渡してその場を去った。
 去年だったか、ある写真展の写真の中に、偶然その少女の姿を見つけた。今は10代の半ばくらいだろうか。私が出逢ったときと変らぬ邪気のない表情で、彼女はレンズに目を向けていた。苦痛や劣等感、怒りや悲しみを伴わない、無垢な雰囲気は、あのときのままのあの娘だった。

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