Photograph from Asia 


   「報道は、世上のアカで飯を食い」

写真・文/ 近藤 衛 (こんどう まもる)   


 

 カンボジアのタイ国境近くに、オスマッチという町がある。97年7月、カンボジア内戦の際、追いつめられたラナリット前第一首相派の砦となった。8月に入ると、オスマッチ周辺に住む約3万人の農民が難民化した。
 難民キャンプの取材をしたのは初めてだった。難民といえば家や農地を追われた貧民、といったイメージが強い。それでも実際には、先進国の医療技術や食糧配給を受け、キャンプ生活もまんざらでない“難民”も少なくなかった。もちろん、彼らは圧倒的に弱者であり、取材する側は高価な機材を抱えた強者だった。
 「噺家は、世上のアラで飯を食い」。落語家を皮肉るこの至言には、時に世の権威を揶揄する噺家への快哉がこもっている。“報道は、世上のアカで飯を食い”とシャレたのは誰だったか。“アカ”ばかりにカメラを向けることに罪悪感をおぼえるのは、おそらく、ほとんどの報道写真家が通る道だ。ロイターやAPの記者には、“アカ”が詰まった記事の配信を終えると、NGOや国連のスタッフに混じって雑務を手伝う者もいた。彼らの淡々とした無表情を目にすると、どこか免罪符を得るような偽善的行為だと感じた。
 今年7月の総選挙でフン・セン第二首相の人民党が勝ち、国内勢力を統合しつつある。延期されたASEAN加盟も射程距離だ。1年前の難民も、平和が戻ったオスマッチに帰っていった。近い将来、カンボジアを訪れる時には、ぜひオスマッチ周辺を歩いてみたい。


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