Photograph from Asia 19


   ロストジェネレーション

   写真・文/ 豊田直巳 (とよだ なおみ)   


 1920年代のパリのサロンの話でも、またアーネスト・ヘミングウェイの話でもない。よってそれはアメリカの「迷える世代」の話でもなければ、「幻滅の世代」の話でもない。ことは今現在のアチェ特別州を初め、インドネシアの地方で進む「一世代が丸ごと失われていく」話である。
 5歳児以下の必須アミノ酸の摂取量の欠乏は、その後の栄養摂取によっては補われない決定的なダメージを人間の脳に与えるという。さらに2歳児のアミノ酸の摂取不足は、その後の知能の発達を留めてしまうと言うのだ。そして、その知能指数の著しい低下(IQで10〜15)が、同一世代の中に20パーセント以上の高率で発生しつつあると言うのだ。さらにその世代には政治的暴力と経済危機から学校教育も受けられない情況まで強制されている。次の世紀を担うはずの子供たちが丸ごと一世代「失われる」ことを指す言葉の話である。
 いや取材者個人の思いで言えば、世代などどうでもいい という気分もあるにはある。だが、たとえば写真の少女が、アチェの小さな村に生まれたという、そのことのために自分たちの国の軍隊に村を焼き払われ、隣人を殺され、見知らぬ土地の難民収容所で、学校へも行けず、ただ命の助かったことの安心感はあれ、日々の「アミノ酸」にも事欠き、未来に対する不安に怯えなければならない言われはないはずだ。 3月、ロクスマウエ市にて。

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