Photograph from Asia 17



 

   新彊からの遠い道

   文/ 井出晃憲 (いで あきのり)   


 ウランバイルは中国・新彊ウイグル自治区出身のカルムイク人である。カルムイク人は世界各地に分散居住するが、現在のところ、ロシア連邦内のカスピ海の岸辺、ヴォルガ河西岸にあるカルムイキア共和国が唯一カルムイク人の統べる国としてある。
 彼は、中国において内蒙古師範大学を卒業し安定した生活を送っていたが、どうしても自分たちの国カルムイキアへ一家で移住しようと決意した。中国・新彊からまずモンゴル国のウランバートルへ、さらにロシアのカルムイキアへ。長い道のりであった。同じモンゴル系であっても、モンゴル国ではたいへんな差別に遭うなど、その道のりは平坦なものではなかった。ウランバートルで妻ウドゥナスンとの間にできた長女にはイジルという名をつけた。カルムイクの言葉でヴォルガ河を意味する。それだけ、彼の地に対する思い入れが深いのである。
 彼ら夫婦は働き者だ。移住後、カルムイキアの首都エリスタの市場で饅頭をつくって売ることで生計を立てているが、それがおいしいと評判でとても繁盛している。はじめはある人の好意で小さな小屋を借りて住んでいたのだが、昨年には自分たち所有のアパートに引っ越した。次は車を買いたいという。また彼には将来ぜひ日本で働いてお金を貯めたいという夢もある。当地で次女のツァガンも生まれ、今は一家4人と一緒に来た両親や兄弟とで幸せな日々を送っている。


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