Photograph from Asia 15


   はっぱの見る夢

写真・文 長谷川香 (はせがわ かおり)      


 「ハッパ!ハッパ!」「ガンジャ?」

 ネパールの首都、カトマンズを訪れる外国人のほとんどが、こう声をかけられる。麻薬の売人たちだ。夕方に会うことが多いが、ときどき昼間でも、視点のさだまらない眼で近づいてくる。明らかに、商品に手をつけているようだ。宗教上の理由から、外で男女交際はできないが、麻薬は公然と売られている。なんとも不思議な世界である。
 サドゥというヒンドウ教の僧は、物欲を捨て聖地巡礼をする聖者である。しかし、都市では少々違っている。瞑想と称して麻薬を吸う。寺院や道で彼らにカメラを向けると、喜んで手を差し出しお金を求める。僧とは名ばかりである。ある昼下がり、気持ちよさそうに眠る僧がいた。手には時計と指輪をはめて、無防備に横たわっていた。物や人があふれ、経済活動の活発な都市で無欲に生きることは実に難しい。
 一日で鼻の中が真っ黒になる程ほこりっぽい街。その道路で物乞いは暮らしている。自分の体よりも数倍大きく重い荷物を背負って運ぶ人がいる。多くの人力車や人が行き交う足元には神聖なる野良牛が横たわっている。トレッキングをしにきた欧米人にお金をせがむ子どもたち。なれなれしく日本語で話しかけてくる客引きやチベット人の物売り。ヒマラヤが人を呼び、観光客が外貨を落としていく。外国人は外貨人さまさまだ。
 麻薬で見る夢のような混沌がそこにはあった。


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